終わり…そして始まり波の音…。 潮の匂い…。 いつから僕はここに立っていたのか…。 「どうしたの?」 声がして振り向く。 そこに立っていたのは、ひとりの少女。 名前も顔も知っている。 僕たちは幼なじみだった。 「見て、できた」 彼女が嬉しそうに見せるのは、砂でできたお城。 「うまくできたね」 「うん、うまくできた」 十分、満足したようだった。 「もうすぐ日が暮れるね…」 海を見て、眩しそうに目を細める。 「そうだね…」 「じゃあ、その前に確かめにいこうか」 「ん? なにを?」 「君がずっと確かめたかったこと」 「この海岸線の先に、なにがあるのか」 「わたし、そんなこと言ったっけ…」 「言ってないかもしれない。でも、そう思ってると思ったんだ」 「そうだね…確かめてみたい」 今なら、その先に待つものがわかる。僕らは。振り返ると、堤防の上にひとがいるのが見えた。 男と女。 男は眠っているのか、顔を伏せて座っていた。 その横で女のひとが、起きるのを待っている。 そんなふうに見えた。 女の人が僕らに気づき、手を振っていた。 僕は手を振り返す。 彼らには、過酷な日々を。 そして僕らには始まりを。 下ろした手を固く握る。「じゃ、いこうか」 彼女が先に立って、待っていた。 「うん」 「この先に待つもの…」 「無限の終わりを目指して」 ただ、一度、僕は振り返り呟いた。 その言葉は潮風にさらわれ、消えゆく。「さようなら」